ラストバージン
「はい、お年玉。大切に遣うんだよ?」

「わぁ!」

「やったー!」


満面の笑みで「ありがとう」と口々に言った桃子と孝太に、それぞれ好きなキャラクターが描かれたお年玉袋を渡すと、孝輔さんがニッコリと笑った。


「葵ちゃん、ありがとう。毎年ごめんね」

「いえ。私の方こそ、お義兄さんにもお姉ちゃんにも、本当によくして貰っていますから」

「あ、ママ! 葵ちゃんにお年玉貰ったの!」

「あら、ちゃんと『ありがとう』って言った?」

「言ったよー!」


居間に入って来た姉に桃子が笑顔で報告をすると、孝太が得意気にニコニコと笑った。


「葵、ありがとう。毎年ごめんね」

「ううん」


夫婦揃って気を遣ってばかりの二人は、桃子や孝太に何かプレゼントをする度に大袈裟なくらい感謝の気持ちを伝えてくれるけれど……。私の誕生日や節目の時にはこちらが恐縮するくらいお祝いをしてくれるから、私としてはせめてそれと同等程度の事は子ども達にしてあげようと思っている。


孝輔さんと姉にとっては、きっとそれが一番嬉しい事だろうと思うから。


「美味しいね〜」


和やかな雰囲気の中で食べたお雑煮とお節料理は、桃子の言葉通りとても美味しかった。

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