私たち、政略結婚しています。


「そんな、待ってよ!いてよ!私一人じゃ…」

私が焦って言うと彼は再びニヤッと笑った。

「…寂しいからいてください、お願いします、…だろ?」

彼のバカにしたような態度にカッと頭に血が上る。

「ば…バカじゃないの!?誰があんたなんか!いいわよ!あとは一人でやっておくから!勝手に帰れば!」

私は叫ぶように言うと彼から目を逸らして企画書を手にした。


伊藤克哉。
私と同期の二十六歳。
自信家で嫌味で。
皆、騙されているせいか社内ではよくモテる。
容姿や人当たりはいいけれど、本当の性格は最悪。いつも人をバカにして。…特に私に対しては…!

あと、一つ。彼は――――……既婚。


どうして私が彼と今回は企画を組まされているのか。
腹が立ってしょうがない。

ちょっと仕事ができるからって威張り散らして。
ええ、ええ。そうよ。
どうせ私にはあんたほどの実力はないわよ。
でも、私はあんたほど、いい加減でもない。


帰りたいのならば勝手に帰るといい。
あとは私が一人で仕上げてみせるから。

今回の企画に私は賭けている。私が企画のチームに抜擢されたのは初めてなのだ。
伊藤にとってはいつものことだろうけれど私は必死だった。


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