春に想われ 秋を愛した夏


届いたビールに口をつけてから、塔子は向い側に座る春斗をじっと見た。

「春斗君は、どうなの?」
「僕?」

急にふられて、ちょっと驚いている。

「同棲について?」
「そう。同棲は、したい派?」
「うーん。その時の状況にもよるけれど。やっぱり、自分から好きになった人となら一緒に暮らしたいかな」

そう言って、春斗は横にいる私を見る。
すると、塔子から鋭い質問が飛んできた。

「それは、束縛の割合が高いってこと?」

意地悪な塔子の質問に、参ったなぁ。なんて苦笑いを浮かべている。

「どうなのかな。僕も同棲の経験はないから、いざそうなった時の感情が束縛なのか、ただ純粋に一緒にいたいからなのか。まだ、分からないや」
「正直で、よろしい」

素直に意見を述べた春斗に、なんだかとても偉そうな塔子。
その二人のやり取りが可笑しくって、私はつい笑ってしまう。

「何、笑ってんだか」
「だってー。塔子ってば、かなり上目線。しかも、春斗の態度も素直すぎるし」

「そうやってね。第三者を気取ってる人に限って、当事者になったりするんだからね」
「ええー。なにそれ?」

「同棲なんて、関係ありませーん。なんて顔してる人に限って、同棲しちゃったりするもんだってことよ」
「私が、同棲? ないない」

私は、目を丸くして驚いたあとにそれを笑い飛ばした。

「どうだか。ねぇ、春斗君」

塔子にふられて、思わず首を縦に振る春斗。


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