春に想われ 秋を愛した夏


そういえば、大学の時にも似たようなことがあったな。
あの時も、夏の初めのとても暑い日だった。

夏休みを目の前にして、私の食欲は数日前から落ちていた。
そして、その日もうまく食事を摂れずにいたんだ。

講義の終わった午後、ランチを摂るために塔子が先に待っているはずの学食のある場所へと、一人キャンパス内を歩いていた時だった。
食欲はわかなくて食べられそうにないけれど、アイスラテは飲みたいな。
なんて、降り注ぐ強い日差しの下ぼんやりと思っていたそんな時、さっきと同じような症状を引き起こしたんだ。

照りつける太陽の日を浴びてクラクラとする体で歩を進めていたけれど、学食のある建物にたどり着く前に私の意識は途中で消えていた。
気がつけば、大学内にある保健室のベッドの上だった。

ベッドのそばにはどうしてだか秋斗がいて、目の覚めた私にスポーツドリンクを飲めと今日みたいにキャップを開けて差し出してきたっけ。

秋斗に抱きかかえられて上半身を起こした私は、素直にそれを受け取り飲んだ。
その後すぐにやって来た保険医の先生が、何か細かくお小言のように、食事をちゃんと摂りなさい。だの、水分補給しないからよ。など言っていたけれど、ほとんど耳には入ってこなかった。

ただ、秋斗に促されるまま、スポーツドリンクを飲み続けていたんだ。

その後、秋斗は落着いた私を家まで送り届けてくれた。

いつも強気でぶっきら棒で愛想もほとんどない秋斗だけれど、いつの間にかこうやって私のそばにてくれることが凄く心強くて嬉しかったっけ。

それが、秋斗のそばのたくさんいる女性のうちの一人だと思われていたとしても……。

昔のことを思い出し、懐かしさと淡く抱いていた秋斗への恋心に頬が緩むと同時に、切なく苦しい感情も呼び起こしていく。


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