今夜、君とBloodyKiss
*プロローグ



「やっと見つけた」


その妖しい声に振り返ると、一人の男が立っていた。

漆黒の髪に、黒いシャツとズボン。
スラリと伸びた手足は細くて長い。
月の逆行で顔はよく見えないが、シルエットからはモデル並みの雰囲気が漂ってくる。

でも、体の震えが止まらない。
まっすぐ自分を見つめてくる瞳は、まるで獲物を見つけた獣のように捉えてはなさい。


「あ……」


震えて声もうまく出ない中、徐々に意識が遠ざかって行く。


「迎えに行く」


その言葉が聞こえたと同時に意識が完全に途切れた。


あれは、誰だったのだろう。


そんな疑問が浮かぶ中、彼の赤い瞳と震えの一番の原因となった口の端から零れていた赤い血の色がやけに鮮明に刻み込まれた。
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