子猫に花束を
親猫の正体

「お見合い!?」


大学生の私はさっきまで友達数人とカラオケをしていた。フリータイムでドリンク飲み放題。おまけにパンケーキの上にふんわりとしたホイップクリームなんかがのったアイスケーキを食べながらだ。


今週のカラオケランキングは?とか、年代別のメドレーソングとか。そんな風に歌って騒いで楽しんできたばかりだっていうのに、お父さんったらわざわざこんな場所に呼びつけてなんの冗談?


「今日は4月2日よ。エイプリルフールなんてもう終わりなのよ」


そうよ。今日は4月2日。まだまだ春休み真っ只中よ。


「星羅(せいら)、これは決定事項だ」


「ちょっと、決定事項って勝手に決めないっ……」


こ、こんなお父さんの顔、初めてみたかも。


「頼む、星羅。現実をみてくれ」


デスクに項垂(うなだ)れるお父さんの様子は普通じゃない。目の前に差し出された一枚の紙。


それは……


「採用通知書?しかも名前が……お父さん、これってどういうこと!?」


しっかりと父の名前が記載された採用通知だった。


「星羅、オマエは少しばかり頭は悪いが」


「あ、頭悪いって……」


「だが、その分母さんに似て気立てがよくて美人だ」


「今度は自分の娘に向かって美人って……い、いきなり何言いだすのよ」


「だから、だからな……頼む!!父さんの為にお見合いしてくれっ!」


こ、この人は誰?あの偏屈で堅物で、湯飲み茶わんでもなんでも投げつける話が全然分からない頑固親父のお父さんじゃないの??
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