psi 力ある者 愛の行方 


小さく息をつき席に着けば、微かに聞こえてくる中傷たち。
それは、この席から対角線上。
前の出入口辺りに固まる女子たちからだ。
その中にいる黒谷慧が、腕を組みこちらを睨むようにして見ている。
聞こえてきた内容は、泉に対する私の態度についてだった。

泉は、二年の中でもわりと人気のある男子だった。
明るく、誰とでも分け隔てなく話す彼は、そこそこ身長も高く、鼻筋の通った端正な顔立ちをしている。
嫌味なところがないせいか、その容姿のせいか。
女子には、かなりの人気があった。

その泉がわざわざ別のこのクラスへ来て、毎朝のように私の席に座り。
毎朝さっきのようなやり取りをしている事を、黒谷は気に入らないらしい。

泉と黒谷は、一年の時には同じクラスだった。
二年になりクラスが離れ、話す機会も減ったのだろう。
二人の間がどの程度のものだったのか、私は知らないけれど。
黒谷が泉に好意を抱いているのは、そのあからさまな態度から解かってしまう。

私から泉に近づいているわけではないのだけれど、黒谷にしてみればそんなことはどうでもよく。
泉の傍に私がいる、という事実。
毎日のように会話をしている、という事実に嫉妬を抱いているようだった。

泉に何の感情も抱いていない私にしてみれば、相当迷惑な話だ。

おかげで、また溜息が漏れた。

けれど、私はいきり立ったりはしない。
常に心は平常心を保つようにしている。
冷静でいなければ、自らを苦しめる事になってしまうから……。
これは、祖母に叩き込まれた教えでもあるんだ。


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