ビター・スウィート
*1

天使と悪魔




大好きな彼を追いかけて、やってきた先。

そこにいたのは、悪魔でした。





よく晴れた五月の空を背景に、東京のオフィス街には今日も沢山のビルが並ぶ。

そこの片隅にある大きなビル。その中のとあるフロアには、『FIERD LINK株式会社』と書かれた会社がある。

部署ごとに小さな部屋で区切られたオフィス。その中にある商品部の一番角のデスクで、私はガチャッと電話を手に取る。



「はい。フィールド・リンク株式会社、商品部の永井です」



都内にある文具メーカー、『フィールド・リンク』。

文房具全般を取り扱い、定番商品から自社オリジナル商品まで……子供用はもちろん大人向けの物も取り揃え、高いデザイン性や有名ブランドとのコラボレーションも積極的に行うことで名を広げ、ここ数年で徐々に成長しつつある企業だ。



その中は企業の心臓部である、商品部がいくつかの課に分かれて成り立っている。

商品のデザイン・制作をする『商品開発課』。お客様担当の『商品サポート課』。

そして宣伝・広告関係を中心に行っている『宣伝広告課』で働くのが私、永井ちとせ・25歳だ。



地元は栃木県の小さな町。そこを出てこの東京で就職し、もう三度目の春を迎える。

白いブラウスにチェック柄のベスト、紺色のスカートという制服姿もようやく似合うようになり、仕事にも慣れ様々なことを任せて貰えるようになった。

こっちでの友達も増えたし、いろいろと順調な毎日だと思う。

そんな日々をより彩ってくれる存在が、彼。


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