重なり合う、ふたつの傷
入学式



高校の入学式の日、私はベッドの上で三十九度の熱と戦っていた。

制服は紺色のブレザーに赤と青のラインが入ったチェックのスカート。

それを着て、かわいらしく校門をくぐり、かわいらしく教室に入って、かわいらしく席に着いて。男子からも女子からも好かれる、そんな予定が見事に崩れた。


たったひとつ救いだったのはルミから来たメールだった。


《梨織、大丈夫? なんと、ルミは梨織と同じクラスです。やったね》



私は熱にうなされながらもケータイは枕元に置いて、いつでもメールを読めるようにしていた。


しばらくしてメールの着信音に気づいた。


熱のある手で触ったケータイはまるで氷のように冷たく感じた。


《今ね、教室でみんなのジコショが終わったところだよ。天野蒼太って超かっこいい。まさにイケメン。ルミ超タイプかも》

こんな時にイケメン情報。

それでも私はすぐに返信した。



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