もっと★愛を欲しがる優しい獣
その1:鈴木くんの眼鏡

(あら……?)

夕飯の片づけが終わって洗濯物でも畳もうとリビングにやってくれば、ソファに寝転がってすうすうと寝息を立てている鈴木くんを発見した。

(珍しいこともあるのね……)

胸の上で伏せられた本はなにやら小難しそうな新書で、読んでいる途中で飽きてしまったのだろう。しおりも挟まれていない。

滅多に拝めない油断しきった表情に、私の頬も自然と緩む。

「う……ん」

小さく唸って寝返りを打てば、眼鏡が顔から落ちそうになる。

私はソファの傍にしゃがみ込んで、気を利かせて眼鏡を取ってみた。

黒縁の眼鏡のレンズ越しに鈴木くんの顔を覗き込むと、2倍ほど大きく見える。

こんなに度が強いレンズで本を読んでいて、目が疲れないのだろうかと心配になってしまう。

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