義兄(あに)と悪魔と私
プロローグ
 
うららかな春の昼下がり。
街の小さな教会で、身内だけの質素な結婚式。
純白のドレスに身を包んだ母の姿を見て、思わず目を細めた。
母のこれまでの苦労を思うと、心の底から祝福できる。

物心ついた時既に父親の姿はなく、女手一つで私を育てた母。
親族とも疎遠だった母はどれほど心細かったことだろう。
決して楽な生活ではなかった。それでも私の為に、いつも笑顔を絶やさず働いてきた。
そんな母が、ようやく羽を休めることのできる居場所を見つけたのだ。

結婚の話を切り出された時、私は二つ返事で了承した。

母が選んだ人だ。反対する理由がなかった。
 
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