恋は盲目 Ⅲ 〜密やかな愛〜
再会は偶然⁈必然的な出会い⁈

「いらっしゃいませ」


重層の扉を開け入って来たお客が顔色を

変える。


そこに立っていた女の客は、忘れもしな

い愛して止まない存在の女、花村 美鈴

だった。


3年の歳月の中、後悔と謝罪しかなかっ

た。


その彼女が今、目の前にいるのに…手を

とり抱きしめることもできない。


手のひらをぎゅっと握りしめ、彼女を見

つめるが目を合わせようとはしない。


「何名様ですか?」


「…2名です。」


彼女の表情は、強張ったままだった。


昔と変わらない彼女。


いや、綺麗になった。


昔も綺麗だったが、年齢を重ねたせいか

さらに綺麗になったように思う。


《出会いは3年前》


一卵性の双子で生まれた俺と弟の浩輔は

、見た目は誰も区別できない程何から何

までそっくりで、違ったのは女の好みと

性格ぐらのものだった。


今では、親でさえ見かけだけでは区別が

つかない。


高校生の頃から女達は、俺と浩輔を見比

べ違いを言い当てるのに夢中になり、得

意げに彼女気取りをする。


俺が浩輔のふりをしていても誰一人とし

て間違いに気づいた女はいなかった。


見かけでしか判断できない女達を馬鹿に

し、浩輔と2人で女達をもて遊んでおも

しろがっていたが、お互いに心の底では

俺たちを見分けれる存在がいないのかと

待ち望んでいた。


高校を卒業後、俺たちは別の大学に進学

し、ほとんど会うこともなく別の人生を

送っていた。


俺は、祖父の店コンフォルト(喫茶店)を

いずれ俺が跡を継ぐつもりで大学時代を

バイトして過ごし、卒業後はコンフォル

トに就職した。浩輔は近くの大手企業に

就職すると頻繁に店に来るようになった




浩輔は、心から愛する女(俺と浩輔を見分

けた初めての女)と同じ会社で出会い結婚

する予定だ。


毎回、結婚式場の打ち合わせの帰りに店

で食事をするために寄ってくれるが、な

ぜか彼女の妹と待ち合わせし3人で店の

奥の定位置で食事をしている。


その妹が美鈴だった。


美鈴が、浩輔を好きなのは見ていてわか

っていた。


姉の男を好きになる心境は、いったいど

んな感じなのだろうと興味が湧き始め観

察していくと、浩輔の言葉に頬を染めた

り、浩輔の愛する彼女への熱い眼差しに

心を痛めていたり、2人の仲睦まじい様

子に無理して笑顔を浮かべる美鈴。


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