百合の花
夜と百合

◇◇◇



思わず男は目を見張った。



自分のもとに来た少女が、あまりにも美しかったからだ。


テレビや雑誌でずいぶん知っている顔なのに、生で見るのとやはりちがった。



こんなに美しかったとは――…




「こんばんわ、社長さん」




妖しく口を開く彼女に、思わず喉を鳴らした。


いつものふわふわの上品なキャラメル色のショートカットでなく、真っ黒なロングの黒髪。

真っ黒のサングラスをかけているにも関わらず、その華やかなオーラは隠しきれない。

所々にパールがついている黒のイブニングドレスは、ホテルのレストランというシチュエーションにあっていた。


そんな彼女は、高いヒールを優雅に響かせ近づいてくる。


「わたし、桐生鈴花です」


やけに妖艶に。

彼女は口角を上げた。



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