河童観察物語。
始まり。

「――…な……水凪!!」

「んぅ?」


誰かに肩を揺すられ、ふわふわとした意識の中から浮上した。


頭をゆっくりと上げ目を擦ると、赤く染まった教室と友達の香実が視界に入った。


「……おはよう香実。どしたの?」

「っは〜〜、あんたって子はいっつもこう呑気よね〜〜」


香実は頭を抱えてため息を吐く。僕はと言えば何で香実がため息を吐いたのか分からず首を傾げた。


「ほら、6時間目の国語の授業。図書室で本を読んで、その本の感想を書けって言われたでしょ? なのにあんた本開いた途端に寝てんだもの」

「あり? そうだったっけ?」


記憶を辿ってみるも、思い当たる節がない。


「まぁいつものことだし、先生も特例ってことで今まで寝かせてくれたのよ。今はもう居ないけどね」

「ほーう……今何時?」

「とっくに放課後よ」


香実の言葉と外の景色ですぐさま理解し、なるほど、と手をポンッと叩いた。







< 1 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop