カムフラージュの恋人
とりあえず、あいつの彼女のフリをする
「・・・少しだけ指に乗せて、手の甲につけて・・・ね?発色がキレイでしょう?」
「わぁホントだ!これ、限定発売だったよね?」
「そうです。“春の恋色チーク”と“恋活(コイカツ)リップ”は、来月までの限定販売となってまして。今私がつけている口紅が、“恋活リップ”です」
「これもキレイな色~。グロスじゃないの?」
「いえ。グロスじゃないんですけど、適度なツヤがあるでしょ?」
「うん。それに色もキレイ」
「赤っぽいピンク色だから、唇だけ浮くこともなくて。自然にお顔になじむ感じ、とでも言いましょうか」
「あぁそうねー。じゃあこれも買います!」
「ありがとうございます」

私は常連客の樋口さんにニッコリ微笑みながら、限定販売のチークと口紅を、丁寧に紙袋に入れた。

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