螺旋上の赤
序章  些細な事
序章  些細な事


「はぁっ……。」

大学の自転車置き場に到着したところ。

(ちょっと、寒くなってきたな……。)

秋冷の風が吹く。
吐く息はまだ、白くなる程ではないみたい。

——黄葉も進み、秋近しとも言われなくなった頃。
ふと見上げると、ここの楓の葉も少しだけ赤掛かってきた。

しかし寒い。
秋は寒いのだ。
秋は春と同じ様な立ち位置で、
気温も丁度よさげなフリをしてるから、油断しがち。

(そもそも、最近は秋が短すぎる。
 夏が終わったかと思えばすぐ冬の気配が……。)

残暑にやられた私の身体は、僅かな肌寒さにも冬の訪れを感じる程だ。

(そのうち曲がり角で白熊さんとゴッツンなんて事も
 あるかもしれない……なんて。)
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