♂性別転換♀
魔力0

「この人痴漢です!」


ギュウギュウ詰めの満員電車で、俺の左手が高らかと掲げられる。


すでに右手は吊革を握っていたので、バンザイしているみたいな恰好になる。


車内でバンザイしていたら、注目を浴びるのは仕方のないことだろう。


周りからの視線が、特に俺の左手を力強く握っている女性の視線が、ヒシヒシと身体中に浴びせられた。


え、ちょっとまって。落ち着け俺。


これはヤバイ状況なのでは?


スーツ姿で赤いメガネをかけている女性は、凄まじい剣幕で俺を睨みつけている。


えーとつまり、この人は痴漢をされて、俺の手を握り、持ち上げたというわけですね。そうですね。


読者の皆様には弁解しておくが、もちろん俺は痴漢などしておりません。


神に誓います。なんなら仏様にでも誓ってやります所存です。


だけどここで「俺はやってない!」と言っても、誰も信じてはくれないだろう。
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