ノイズ

プロローグ

「だから言ったの。前から好きでした、あたしと付き合ってください！って。マジで恥ずかしかったけどね。ホントだってば〜」



一人の女子高生が、携帯を片手に屈託のない会話を続けていた。



ここは路線バスの中であり、本来ならマナー違反となるはずだが、のんびりとした土地柄のせいか注意する者など誰もいなかった。



バスには勤め帰りのサラリーマンや買い物帰りの主婦など、運転手を入れても数名の乗客しか乗っていない。


「彼ってちょっと嫉妬深いんだけど、それってあたしのこと好きだから縛りたくなるんだよね？」



静かなバスの中で、女子高生の声だけが響き渡る。


エアコンの効いていないバスの窓は全開になっていて、時折女子高生の長い髪をふわりとなびかせた。


車内をジリジリと照らしていた日差しもようやく傾き始め、他の乗客達も初夏の風の心地よい感触に身を任せていた。