手紙
第一章

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「私は今回の数学のテスト、48点でしたぁぁぁぁぁ!!」




潮の香りが漂う海、蒼井睦月はそんな海に向かって大声で叫んでいた。




遠くからその様子を眺めている森田恵理は、ニヤリと口元を上げてみた。




それを見て、隣にいた堤真帆は少し引き気味に声をかける。




「恵理ちゃん何今の顔」




「えっ?」




「すごい悪魔な顔してた」




「うそっ」




人に指摘されて初めてわかる自分の顔。





恵理は「恥ずかしい」と両手を頬に重ねた。





「だって本当に叫んでるんだもん。バカだなーって思って」




「睦月は純粋だからね」




まだ叫んでいる睦月から目を離さず、平沢美奈は大人な表情でそう言った。






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