海までの距離
黎明


あ、佐渡…。



7月10日。新潟、梅雨明け宣言。
快晴、真夏日、午前8時の気温27度。
「もう雨は降らないわよ」というお母さんの強気な言葉に押されて、約2週間振りに自転車で学校に向かう。
ここ最近は雨の日は勿論のこと、曇天の日も「いつ雨が降るか分からないから」と念のためにバスで登下校していた。
私の家から街の中心地にある学校までは、バスで30分。自転車で45分。
45分かけて自転車を漕ぐというのは、女の子には少しきつい。特に、こんな暑い日や冬の木枯らしが吹く日なんかは。
でも、そんなのは1年生の時点ですっかり慣れた。
それに、自転車で学校に行くのは嫌いじゃない。
学校へは、大通りに沿っていくルートと、海岸に沿っていくルートがあって、前者の方であればもう少し早く着く。
と言うより、海のルートは遠回りになってしまうから。
それでも、私は時間に余裕がある日はよく海のルートを選んだ。
私の家は信濃川のすぐそば。
信濃川の土手に沿う道の途中で、直進すれば海へ、橋を渡れば大通りへ。
今日は化粧に時間がかかってしまったために、いつもより5分遅く家を出た。
だけど、私は迷わず直進。
信濃川と日本海が交わる手前の橋を曲がり、左手に海を走らせる。
自転車の変速は一番重くして、力一杯漕ぐ。
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