君の檻から出されたなら。
***





「なぁ………少しでいいんだ」




俺は今日も懲りることなく彼女に尋ねる。



「………」


その声に反応した彼女は
読んでいた本から俺に視線を移すと
細長い髪を揺らして柔らかく笑うんだ。






「だめよ」


そう言った彼女はまた手元の本に視線を落とした。





無駄な動きなど一切ない。
誰もが見惚れるであろう美しい彼女は、仕草さえ綺麗だ。



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