定義はいらない
終わり
「私、ナオのこと、愛してると思う。」

「その言葉は軽はずみに使うものじゃないと思うよ。」

「軽はずみじゃない。27年間生きてきて初めて使ったんだから。」

ため息。そして沈黙。

電話口の重い雰囲気。

勇気を振り絞って使った言葉の見返り。

「まぁ、俺の事、尊敬とかはしてもらってもいいけどね。」

「いきなり尊敬って感情にはたどり着かないでしょ。」

「まぁね。」

もう一度、ため息をついて続けてナオは続けた。

「俺は杏子を捨てないよ。」

彼らしいなと思った。

そして、この言葉だけで私の今後の人生は照らされた。

「とりあえず今日はいったん電話を切ろう。じゃあ、またね。」

「うん。おやすみ。」

そして、

終わった。
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