二重人格神様
プロローグ







―――――…
―――…






『…じーや…どうして、どうして僕はこんなところに閉じ込められないといけないの?』


『……海鈴様…』


『僕が何をしたの?僕は僕だよ?ねぇ、じーや!僕をここから出してよ!』



『…海鈴様、それはなりませぬ』


『どうして?ねぇ、じーや!!』



『……っ』


『じーや…僕…何もしてないよ。こんな所…いやだよぉ…出してよ!!一人はいやだよぁ!』



『許してくださいませ、海鈴様』



『…じーやぁ!!』




小さな男の子の声が硬く閉ざされた部屋の中でうるさいほど響く




『海鈴様…』


その声を硬い牢獄の外から涙を堪えながら聞く老人


顎に白く長い毛がある老人は震える脚で必死にたちながら



その鳴き声を聞いている――…




『じーやぁ…やだよ!出して!出して!』



『なりません。海鈴様…あと少しの辛抱です』



『やだぁ!じぃや!!!』




泣きじゃくる男の子に老人は力強く手をにぎり



背中をむけ、暗く冷たい牢獄から去ろうと背をむけた




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