獣は禁断の果実を蝕むのか。
そして誘惑はささやかれた。

「バカ者が!!」


重たい空気が漂う会議室を切り裂くように、部長の罵声が響き渡る。


「す…すみません。」


身をすくめ、小刻みに震えるカラダ。


小さな声も震えるけど。


目の前に座るイラだった部長は興奮しすぎて、気づいていないと思う。


その隣に座る常務は、あきれ顔でうつむいたまま。


憧れていた常務に、こんな形で会うことになるなんて…。


常務は、36歳で異例の出世で。


仕事も出来るだけじゃなく、キリッとしたイケメン。


だから、会社中の女の子のあこがれの的だった。


この状況は心が痛む。


「すみませんで、済むと思っているのか!?」


畳み掛けるように、部長の罵声が浴びせられる。


それも仕方ない。
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