結婚白書Ⅰ 【違反切符】
お袋の陰謀


電話のたびにお袋の小言を聞かされる。



「アンタ いい加減に彼女を連れてきなさいよ」


「そんなのいないよ・・・」


「本当にいないの? 情けない男ね じゃあ見合いでもしなさい! いい?」




なんでそうなるんだよ

彼女がいなくて悪いか

遊ぶ友達はいるし 会社に女の子だっている

結婚して家族のために働いて 

自分の時間はなくなって 金だって自由にならない

そんなの 当分願い下げ



心の中で お袋に悪態をつく。




「それで 今度はいつ帰ってくるの?彼女を用意しておくから」


「用意しておくって・・・ゴールデンウィークに帰るよ 

けど いきなり見合いなんて イヤだからな」


「わかった ちゃんと先に連絡するから 

帰ってくるときは背広を持ってきなさい いいわね」




お袋が畳み込むように話す。

彼女を探しておくって そんな都合よくいくもんか。





桐原 高志  30歳  公立大学卒  会社員

結婚の意思 全くなし




お袋には4月29日に帰省すると知らせたのに 見合いの話は出なかった。



彼女を準備しておくなんて言って 結局見つけられなかったんだな

そう 簡単に見つかるもんか



帰省の飛行機の中でほくそえむ。

のほほんとした気分も あと1時間ほどだったとは・・・ 

お袋を甘く見ていた俺の 読みの甘さを知らされるときが近づいていた。




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