ポチ【TABOO】
ポチ
「せーんっぱい」

 無邪気に私を呼び止めるのは、新入生の男の子。子犬のように元気で人懐っこいから皆にポチって呼ばれている。

「何―?」

 私は読みかけの本から目も離さずに聞く。読書好きな彼氏が勧めてくれた一冊だけあって、読み応えがあり中断したくないのだ。

「今度、写真のコンテストがあってー」

 ポチは気分を害したわけでもなさそうに、ぺらぺらと喋りはじめた。

「……ね、いいですよね? 先輩じゃなきゃ嫌なんです」

 聞き流していたら、いつの間にか必死に懇願を始めていた。
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