ヤンキー君と異世界に行く。【完】
1・トリップ!


────自殺。


そんなことするやつ、絶対バカだと思ってた。


いじめられたなら、学校へ行かなきゃいい。転校すればいい。
学校なんか、世界中に山ほどある。


失恋したなら、違う人を探せばいい。
異性なら、世界中に星の数ほどいる。


希望を失ったなら、新たな希望を探せばいいじゃないか。
生きていれば、いつか見つかるはずだ。


……仁菜(ニイナ)はそんな正論を平気で吐いていた、今までの自分を恥じる。


どーでもいいことで死にたくなることって、けっこうあるものなんだ、と。


この春に新しくなったばかりの制服。
白いシャツに、チェックのスカート。
その上に大きめのカーディガン。
紺色のソックス。


ごく普通の女子高生の格好の仁菜は、ぼんやりと目の前の水面に自分の顔を映す。


……さえない。


今朝、肩までの髪を、くるりとゆるく巻いてみたけど、気分が浮上することはなかった。


去年までは、春になったら花のJK。
楽しいことが、きっとたくさんある。
そう思っていたのに。


水面に映る、ゆがんだ自分の顔。


それは、泣き顔に見えた。


< 1 / 429 >

この作品をシェア

pagetop