おかしな二人


頭を垂れていると、水上さんがまた視線を移してきた。

「なぁ、あかり」
「ん?」

あたしは、項垂れていた頭を持ち上げる。

「これ、どう思う?」

水上さんは、ガラスケースの上から一つのアクセサリーを指差した。
あたしは、水上さんの指の先にある、ガラスケースの奥をを除きこむ。
そこには、ホワイトゴールドでできた、可愛らしいハートモチーフのチャームがあった。
ペンダントトップに、とその傍にネックレスチェーンも並んでいる。

「これ?」
「うん」

どう思うと訊かれてまず最初に頭に思いついたのは、あたしには到底買えない代物だということ。

「正直、よく分からないよ。だって、こんなのつけた事もないし、買ったこともないもん」

卑屈になったつもりはないが、事実を口にすると情けなくもあった。

だって、その金額たるや、この買ってもらったコートどころの騒ぎじゃない。
桁がまず違う。

あたしなんて、このコート買ってもらった時でさえ、恐縮すぎてどうしようかと思っちゃったくらいなのに、こんな凄い金額の物をどうかと訊かれても、ただ感嘆の溜息という感じだ。



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