芸術的なカレシ
新聞紙?





「結婚しよう。瑞希」



いつもの部屋。
いつもの、私の部屋だ。

拓(タク)と私が寄り掛かっているクリーム色のソファーは、少し剥げてきてるけど、初めてのお給料で買った、大事な宝物。
角が丸いのに、どっしりした感じなのが気に入っている。
コーデュロイの肌触りも、肌に馴染んで気持ちいいし。



「は?」



そう、ここは、いつもの、私の部屋。
壁掛け時計だって、無垢の、丸いやつで。
草木をデザインした、白黒のタペストリーも飾ってある。

なのに、隣で笑顔を作る拓は、いつもと違う。
何が違うって、今頃気付いたけど、着ている服も変だ。
変だ、というのには語弊がある。
拓らしくない、という意味。
白いシャツに、細身で濃いめインディゴのデニム。
シャツのボタンは、第ニボタンまで外されてる。
まるで、漫画にでも出てくるようなスタイル。
あれ、拓って、こんなに細かったっけ?
10年も付き合ってると、そういうとこ、どうでもよくなっちゃうからな。
てか、私。
今だかつて、拓が白いシャツなんか着てるのなんて、見たことなかったんですけど。







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