ヴァージン=ロード
 

 照明に当てられたとき、今にも血が沸騰するかのような錯覚を感じる。それを熱意と呼ぶのかは、私にもわからない。
 情熱と呼ぶにはあまりに穏やかで、静かに燃えている炎みたいな熱さ。そんな言葉にできない感情を胸に秘めて、私は光に彩られた道を進む。

 光に溢れ、着飾った見目麗しいモデル達が通るこの道を、ランウェイと誰が呼び始めたのだろう。黒目がちのアーモンドアイのせいで、猫と揶揄される私にはキャットウォークの呼び名の方がお似合いかもしれない。だけど、この道を歩き切ったら、飛び立てるような気持ちになるから、滑走路(ランウェイ)でもいいかもしれない。

 羽宮伊咲、二十六歳。人より高い身長と、ほんの少し整った顔。高校時代、真っ黒なロングストレートの髪をたなびかせて歩く私の姿を隠し撮りした悪友が、オーディションに写真を送りつけたのがきっかけでモデル・ISAKIになった。
 はっきり言ってきっかけは微妙だけど、私はこの仕事が好きだ。胸の中で燃える炎が、私を前に進ませてくれるから。
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