冷たい上司の秘密の誘惑
1.冷たい上司
「おめでとう、美穂」

「ありがとう」

沢山の人の祝福、この就職氷河期に、

私は運よく出版社に就職が出来た。

専門学校で色々な資格を取ったおかげもあるのか、一発合格。

こんなに嬉しい事はない。



「おい、久保美穂」

「何でしょうか、篠田部長」

デスクワークの最中、部長が私を呼んだ。…しかも大声で。

私は思わずため息をつく。

だって、今日、もう5、いや6回目。篠田部長から呼び出しを受けるのは。

重い足取りで、篠田部長の元にやってきた。

その間、先輩たちの視線が痛いくらいたくさんあった。

哀れんでる目。またか、と呆れてる目。

今日何度目よ?!なんて怒ってるような目。

…私だって、何度も呼ばれるのは嫌だ。頑張って仕事をしてる。

何度も見直しをしてから、篠田部長に持って行っているのに。



「お前の目は節穴か?」

「・・・」


「ここも、ここも間違い、やり直し、っていうか、

小学生からやり直し」

「・・・」

私は思わず、涙目で睨んでいた。だって、あんまりにもヒドイ言いよう。

確かに間違いを指摘されるからには、私の落ち度はある。

でもだからってそこまで言わなくても。
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