不機嫌な果実
〈8〉秘密のデザート


「待ってください!」


「な、なによ!いきなり」


立ち上がったはずなのに……。


小菅の手によって、また元の場所にすとんと座らせられてしまった。


目の前の小菅は、麻紀の両肩に手を置きながら顔を覗き込んでいる。


至近距離にいる小菅に、胸がドキドキする。


風が出てきた。


サワサワと揺れる竹の大群が、こちらに向かってお辞儀しているみたい。


「さっきも言いましたよね?あとのことは部長に任せてきましたから何も心配いりません。
部長だって、なんだかんだ言いながらああいうのが好きなんだから少しくらいはいい思いをさせてあげましょう」


「でも、責任もあるし……」


「そんなふうだから渡辺さんは肝心なときに何も言えなくなるんですよ」


「何よ、それ?
意味が分からないわ」



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