わがまま娘の葛藤。
それぞれの想い



数日後、礼の風邪もすっかり完治して(相変わらずあたしの部屋に入り浸ってるけど)、いつもと変わらない日々に戻った。

スノボ旅行の計画も着々と進んでいる。


それでもあの日、蘭さんに言われた言葉がずっと引っ掛かっていて。
そんなあたしを礼もきっと不審がってる。
だから、毎日自分の家に帰るより先に、あたしの家に顔を出すんだろう。


ソファーに座って、テレビ鑑賞中。
テーブルの上で震えてるりんごのマークの便利な現代ツール。
明らかにあたしよりも近い位置に置いてあるのに。

本当に気づいてないのか。
分かっていて、出ないのか。

「礼、携帯鳴ってるよ」

『うん』と空返事をして、電話を切る。

見たくなかったのに。
視界に入ってしまったディスプレイ。
そこに表示されていた一文字。


――【 蘭 】



最近、よく蘭さんから連絡が入る。
電話だったり、メールだったり。
でも、礼は決まってそれを無視する。

基本的に紳士的で、女の子には滅法優しい礼が、なんで蘭さんにだけはこんなに冷たいんだろう。

取り巻きの子猫ちゃんたちにするように
、適当に優しくあしらったなら。
不安なんて、地球の裏側あたりまで吹っ飛ぶだろうに。


他の女の子と同じように接しないのは。
“初めて惚れた女”だから?

< 34 / 60 >

この作品をシェア

pagetop