クリスマス・ハネムーン【ML】
恋人達の午後
 

 すげー!



 僕は、自分の周りに広がる海の光景に。

 全てを忘れて、目を見張った。



 ケアンズの港から、スキューバ・ダイビング用の小型ボートを借り。

 機材一式を装備して、グレート・バリアリーフの懐に潜れば。

 今まで、水族館や図鑑でしか見たことの無い生き物が。

 熱帯魚や珊瑚や海藻が、色とりどり、鮮やかに。

 僕の手元のすぐ側まで迫って来る。

 しかも。

 海のキレイなことが半端じゃねぇ。


 なんて透明度だ……!


 その視界のクリアーさに、アクアラングをつけたまま、僕は、ため息をついた。

 スキューバ・ダイビングの限界深度。

 だいたい、海面から三十メートル下近いのに、海中は、びっくりするほど明るかった。

 珊瑚が砕かれて出来た、白い砂の海底から海面を見上げれば。

 陽の光が、カーテンのように揺れて、とてもキレイだ。

 そこに、僕のついた、ため息が、丸い空気の泡になって。

 忙しいシャボン玉のように浮き上がる。

 その先に。

 見慣れた長身のダイバーが、僕に向かって手を振っていた。

 必ず、二人一組で潜る決まりになっているスキューバでも、僕のバデイ(相棒)になっているハニーだ。

 こんな。

 とても幸せな光景は。

 例え。

 水族館にある世界一巨大で豪華な水槽でも。

 きっと絶対適わない。

 しばらく泳いでいるうちに、見つけた。

 座布団よりでっかいマンタ(エイ)をハニーと一緒にからかっているうちに。

 楽しい時間は、あっという間に過ぎた。



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