手紙
第一章
____1
「私は今回の数学のテスト、48点でしたぁぁぁぁぁ!!」
潮の香りが漂う海、蒼井睦月はそんな海に向かって大声で叫んでいた。
遠くからその様子を眺めている森田恵理は、ニヤリと口元を上げてみた。
それを見て、隣にいた堤真帆は少し引き気味に声をかける。
「恵理ちゃん何今の顔」
「えっ?」
「すごい悪魔な顔してた」
「うそっ」
人に指摘されて初めてわかる自分の顔。
恵理は「恥ずかしい」と両手を頬に重ねた。
「だって本当に叫んでるんだもん。バカだなーって思って」
「睦月は純粋だからね」
まだ叫んでいる睦月から目を離さず、平沢美奈は大人な表情でそう言った。
< 1 / 432 >