課長さんはイジワル
第13話 見つめ合う瞳
「杉原!おい、杉原!」

課長の呼ぶ声にはっと我に返る。

「飛ばし過ぎだぞ」

「えっ?!」

「140出てる」

ちらっとメーターを見る。

時速140km。

どんだけ、『頭文字D』になってたんだか……

そろそろとスピードを落とす。

「次のサービスエリアで俺と交替しろ。良く頑張ったな」


初めて掛けてもらった課長のネギライの言葉に、ぶわっと熱いものが込み上げて来る。


「こんなことで泣くやつがあるか」


課長が苦笑いする。


そして、何だか、そのままずっと課長が私を見ているような気がする。

こそばゆいような……

落ち着かないような……

ハンドルを持つ手が小刻みに震える。


「課長、あの……私の顔、何かついてますか?」

「あ、いや」

課長は前に向き直る。

「ちょっと考え事してた」

「何をですか?」

だけど、もう一度、課長のじっと私を見つめる眼差しに、ガチにぶつかってしまう。

切れ長の美しい二重の瞳が今もじっと私を見つめている。

やだ。

変だ。

息が速くなってる。

その上、ドキドキなんてしちゃったりもするのは、なぜ?

「お前のことだよ」

「わっ!私のことっですか?!」

声がみっともないくらい裏返る。

ちらっと見た課長の顔が、セクシーにすら見えちゃうなんて、脳がズンドコダンスをしているに違いない。

課長は、顔だけはイイだけに始末に負えない。

「思ったんだ。きっと、お前は、神様が仕掛けた俺の人生の……」

胸がドキンと跳ね上がる。


かっ、課長、いけません!

私、ダメです。

オフィス・メイク・ラブは対応不可能です。


お見合い専門で、一気に勝負を賭ける方が……


バクバク乱れ打つ私のヤワな心臓に「最大の試練だな」と、無情な課長の言葉がトドメを刺す。




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