秘密
◇第5話◇
◇◇◇




どうしよう?押そうか?

でも、佐野君まだ寝てるかも…
今日もお弁当を作って来てしまった私。
チャイムを押そうかどうか考え中。
でももし寝てたりしたらそろそろ起きないと、遅刻しちゃうよね?昨日後一回遅刻で欠席って先生が言ってたし…

よし。押そう。

人差し指をインターホンのボタンに手を伸ばしかけた時、

「わっ!」

いきなりドアが開いて、歯ブラシをくわえた佐野君が顔を出して、びっくりして思わず声が出てしまった。

そんな事よりも驚いたのが。

佐野君!裸っ!
上に何も着てないっ!

「…ごっ、ごめんさい!」

私は慌てて下を向き、お弁当の入った紙袋を下に置いた。

「…また作って来たのっ、よかったら食べてね!それじゃ!」

立ち去ろうとした私の腕を佐野君が掴んで、

「ひょっほ、まっへへ…」

「…はい?」

お弁当を拾うと佐野君は、そのまま私を玄関に入れて、すぐ横にある流し台で歯磨きの泡を吐き出すと。

「…ちょっと待ってて、一緒にガッコ行こ、すぐ用意するから」

「…え?うん…」

佐野君はうがいを済まし、そのまま流し台で顔を洗い始めた。
よく見ると、前髪をピンクのピンでとめていて、それが妙に似合ってて、次に佐野君の引き締まった身体につい目が行ってしまい、慌てて視線を反らした。

「…何で私が居るってわかったの?」

いきなりドアが開いた事に不思議に思った私は、佐野君に聞いてみた。

「窓から奏が見えたから、全然チャイム押さないんだもん、ドアの覗き窓から見てた、待ちきれなくてドア開けた」

……見てたの?佐野君…
恥ずかしい…

「…まだ寝てたら悪いかなと思って」

「はは。起きてるよ、着替えてくる、上がって待ってる?」

そう言って奥の部屋へと向かう佐野君。

「…ううん、ここでいい」

キッキンと部屋は繋がっていて、部屋全体が見渡せる、一人暮らし用のワンルーム。

あまり広くはないけど、綺麗に片付けられていて、佐野君は几帳面なんだとわかる部屋。

佐野君、不器用って言ってたけど、掃除は綺麗にしてるみたい。

ふふふ。

掃除する佐野君を思い浮かべてしまって、なんだか微笑ましくて、口許が綻んでしまう。


< 127 / 647 >

この作品をシェア

pagetop