龍とわたしと裏庭で【おまけの圭吾編】
第五話 苦行の終わり
真夜中に目が覚めた。

眠れそうにない

水でも飲むか


寝室を出て暗い居間を通り抜ける。


僕の部屋に志鶴が泊る時の寝床は空っぽ

まるで今の僕の心のよう


水を飲んで

ため息ついて

階段を下りて

志鶴の部屋のドアを開けた


いないのは分かってる

それでも志鶴の痕跡を求めて部屋の中をうろつく


しおりが挟まった読みかけの文庫本

志鶴がするとも思えない濃い化粧の女の子達が表紙でほほ笑む雑誌

中身の入っていない香水瓶のコレクション

縁日の射的で僕が取った金魚のぬいぐるみ


「圭吾」

戸口から姉の彩名の声がする。

「何?」

僕は背中を向けたまま答えた。

「いい加減になさい。もう三日もそんな事してるじゃない」


三日?

じゃあ僕の苦行ももうすぐ終わりだ。


「もう部屋に戻るよ。起こしてゴメン」

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