秘密
◇第8話◇
◆◆◆


晩飯を実家で食って、アパートに帰り着いたのは23時前。

もっと早く帰るつもりだったんだけど、兄貴に髪を切ってもらったりして。

飯の後も奏は兄貴の部屋に入り浸り、兄貴の仕事の話や、美容学校の話しとかを色々と聞いたり、フィギュアで遊んだりと、なかなか帰ろうとせず、こんな時間になってしまった。

どうやら奏は兄貴の職業に興味を持ったらしく、終始興味津々と言った感じで、兄貴の話を真剣に聞いていた。

「ここでいいの?奏ちゃんの家まで送って行くよ?」

アパートの駐車場で兄貴はそう言った。

あ。そっか、兄貴は美樹の家に帰るって知らないんだった。

「あのさ、兄貴…「はい。ここでいいです」

奏に遮られた。

「うち、ここから近いから、もう遅いし、制服も佐野君ちに置いてるし…しず、お兄ちゃん明日も仕事でしょ?佐野君に送ってもらうから大丈夫です」

「そっか…茜、ちゃんと送っていけよ?」

後部座席の俺にチラリと目をやる兄貴。

なんだその目は、ちゃんと送っていくに決まってるだろ?



「じゃ、今日はホントに楽しかったです、ありがとうございました、お休みなさい」

「うん。俺も楽しかったよ、また泊まりにおいで、お休み。茜も勉強、頑張れよ?」

「…うん。お休み、兄貴」

兄貴の車を見送り部屋に戻ると、奏は荷物をまとめだした。

「…じゃ、佐野君、私帰るね?」

「は?帰る?美樹ちゃんちだろ?」

「……実はね…帰ってくる途中で…」

奏は携帯を取り出し少し操作して俺に手渡した。

『かなちゃんごめん

拓也が急に熱出しちゃって、今日は拓也んち両親法事に行っちゃってて誰も居ないの

あたし今から看病しに行くから今日は拓也んちに泊まるね?

ホント、ごめん

佐野君によろしくね☆』

……よろしくね☆

…って、美樹ちゃん…

「…だから、今日は帰るね?」

「でも…その腕じゃ…」

「あはは、片腕でも結構なんとか過ごせてたでしょ?だから、大丈夫」

全然大丈夫じゃない、ペットボトルも開けられないんだぞ?

「……泊まっていけば?」

「え?」

「わざわざ帰らなくても…うちに泊まっていけばいいじゃん」


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