月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
ありがとう さようなら
夜は意外と早く寝つく事ができた。

達郎兄ちゃんの真意をはかってドキドキするより、和夫さんとのやり取りでの疲れの方が大きかったようだ。

上半身だけを起こしてまどろんでいると、お母さんが来た。

「あ、久しぶり」

「なに言ってるの」

あきれ顔でお母さんが言った。

「なんか数ヶ月ぐらい会ってなかった気がして」

「あんたの身の回りだけ時間の流れがおかしくなってるのかね」

「たぶんそうかも」

「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ」

お母さんは再びあきれ顔になった。

「さっさと退院の日取り決めてきて良かったわ」

「へ?」

「早く日常生活に戻さないと」

「ちょ、ちょっと」

「なに?」

「あたしもう少し入院してるんじゃないの?」

たしかおばあちゃんは、半月ぐらい監禁しとけと言ったはず。

いや監禁とは言ってないか。

「あの場ではああ言ったけど、本気で半月も入院させようなんて思ってないわよ、お祖母様は」

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