あたしの彼は『ヒドイ男』
あたしの彼は『ヒドイ男』


乱暴に私の髪をかき上げて、獲物の喉元に牙をむくライオンのように、強引に首筋にキスをされた。
押し付けられた熱い唇の感触に、ぞくりと肌が粟立つ。

「ひゃ……」

驚いて首をすくめたその隙に、あっという間に狭いソファーの上に組み敷かれ、服を乱された。
ぱさりと脱ぎ捨てられたシャツを横目に見ながら、私はヒドイ男の名前を呼ぶ。

「カズ……」

覆いかぶさる逞しいカズの身体を見上げ、私はいつも決まって同じ言葉を呟く。

「カズ、すき……」

掠れた私の声を聞いて、カズは微かに目を細めた。

「知ってる」

にやりと、憎たらしいくらい余裕のある意地悪な微笑み。

「ね、カズは私のこと、好き?」

肩にしがみ付きながらそう聞くと、私の質問には答えずに、カズは片方だけ口角を上げて見せた。


< 1 / 74 >

この作品をシェア

pagetop