月と太陽の事件簿16/さようならの向こう側
あたしのせい?
朝のニュースが次のように告げた。

『昨夜午後8時50分頃、××区△△病院から「入院中の若い女性が飛び降りた」と警察に通報がありました。

女性はこの病院に入院していた都内の女子大生・雪村多江さん(20)。

雪村さんは病院の屋上から飛び降りたとみられており、発見された時は、ほぼ即死状態でした』

あたしはリモコンでテレビのスイッチを切った。

昨夜はどうしてたのか、あんまり覚えていない。

何も考えられず、布団には入ったものの、寝ては目が覚め、寝ては目が覚めてたような気がする。

泣きすぎて目は真っ赤。

頭の中はぐるぐるしっ放し。

朝食はほとんど食べられなかった。

昨日の、多江さんの笑顔が頭に浮かぶ。

『さようなら』

あの言葉の意味は自ら死を選んだことを示唆していたのか。

あたしはもらったネックレスを眺めた。

『ありがとう旭さん』

さようならの前に言われた言葉を反芻してみる。

「でも、何で…」

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