頭痛
第四章 遺書
 前略

 この手紙を読んでいるということは、既に愚息の日記に目を通して頂けたことだと思います。
 貴方様の御推察の通り、信一郎は、良からぬことを考えていたようでございます。
 貴方様は、小さな頃から愚息の相手をして下さった、数少ない大切なお方です。
 信一郎のことを、本当に友達として扱ってくれました。
 貴方様もご存知の通り、愚息は精神を患っており、皆さまから敬遠され、肩身の狭い生活をして参りました。貴方様がいなければ、ここまで生きることも、ままならなかったことでしょう。

 貴方様には、感謝をしても、感謝しきれない御恩がごさいます。

 しかし、そんな貴方様に対して、少なからず疑念を抱いてしまったわたくしに、今はただ、ただ恥じている次第でございます。

 愚息の手紙の通り、貴方様は爆発事故の日、大変酔っていらしたと聞き及んでおります。
 愚息の申すには、貴方様はお酒にとても強く、全く酔わないとのことです。
 何度も繰り返しますが、貴方様は、愚息にとって、掛け替えのないお方です。
 愚息は、貴方様には、何一つ、隠し事など出来ない間柄と聞きました。
 そして、もう一つ、この父親であるわたくしにも、同じことが言えるのでございます。
 あの子は、川辺りで転落し、溺れ死ぬ直前に、わたくしに全てを話しているのでございます。
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