魔女の悪戯
岩佐城
レオもまた目の前の光景に混乱していた。
全身に電流が流れたような感覚がしたあと、目の前が眩しく光って思わず目を閉じ、光が収まって目を開ければ、さっきまでいたはずの騎士の訓練場ではなく、見たこともない場所にいて。
自分に攻撃を仕掛けてくる男は、親友で茶髪に茶色い瞳の騎士・ロナウドではなく筋肉質のおっさん。
もちろん髪と瞳の色は、黒。
自分の持っていたはずの銀色の剣も、今はただの木で出来た棒っ切れで。
しかし、考え込む余裕を持たせまいと、おっさんは次々と激しい攻撃を打ち込んでくる。
レオは受け流し続けるばかりで、おっさんはニヤリと笑って鋭い突きを仕掛けてきた!
咄嗟に体を捻ってかわし、かわされたおっさんはさっと間合いを取る。
かわした時に気づいたが、やけに身体が軽い。
それもそのはず、騎士の象徴ともいえる銀色の鎧なんて身につけてはおらず、木綿で出来た濃い青色の着物に焦げ茶の袴。
普段着の身体のラインを出したシャツとパンツよりずっとひらひらとしていて邪魔だったが、鎧よりは動き易く、ふわりと男との間合いを詰める。
おっさんもなかなかの腕前で決定打とはいかなかったが、今度はこちらの番とばかりに激しい攻撃をする。
当のおっさんは、いつもの忠純とは違う、変な太刀筋に困惑してしまい、一瞬の隙を生んでしまった。
レオはそれを見逃さず、カンッ、とおっさんの木刀を弾いて喉元に自らのそれを突き付ける。
「そっ、それまでっ!!」
小姓が慌てて勝敗を宣言し、レオは木刀を下ろした。