バニラ
Vanilla5*好きなのは、あなた*
目を覚ますと、恭吾はもうすでにこの場にいなかった。

「――そっか、仕事だもんね…」

呟いた後、横になっていた躰を起こしたら、
「――痛ッ…」

ズキンと、腰が悲鳴をあげた。

同時に、恭吾に激しく愛された昨日を思い出した。

床に視線を向けると、チョコレートの銀紙が散らばっていた。

テーブルのうえには、空っぽになったチョコレートの箱があった。

「――片づけなきゃ」

あたしは痛む腰をあげると、掃除に取りかかろうとした。

その時、テーブルのうえの恭吾の携帯電話がチカチカと光っていることに気づいた。

恭吾、忘れて行ったな。

たぶんこれは、恭吾からの着信なのだろう。
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