会いたい
憶えている

 彼は、私に気づくなり眼を丸くさせた。
 確かに、こんなところにこんな格好で来るのは少々場違いだったと思う。
 でも、彼の顔には嬉しいような表情が浮かんでいたので、私は気をよくしていた。

「どう、きれいでしょ?」

 私はくるりと回って言った。
 彼は感動したように何度も頷いた。
 手もたたいてくれた。
 音はなかったけれど。

「今日ね、お見合いしてきたのよ。わかる? お見合いよ、お、見、合、い」

 目を丸くして彼が頷く。

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