恋スル運命
揺れる想い
「それで、カイの満足いくような表情はできたのかい?」


「はい。少しはマシになったって言われました。」 


ジョージさんと夕食をとり終えて、ふたりでソファに座ってゆっくりしていると尋ねられ、答えた。


「けれどまだ納得してもらえる表情とはいかないようで……」



あの後コテージに入り、絵を描いてもらうため、キャンバスの前に座ったんだけど……。



「結局今日も顔のスケッチはしてもらえませんでした」



カイの意志の強そうなあの目が、

まるで私のすべてを暴こうとしているようなあの目で
見つめられると、心が落ち着かなくなっていって、
絵を描くためだと分かっているけれど、顔がどうしてもこわばってしまった。


「サラ?」

覗き込まれて、ボーとしてしまっていたことに気づきハッとすると、不思議そうな顔をしていた。

「ご、ごめんなさい。考え事をしてました」


「どんな考え事?」


なぜカイに見つめられると心が落ち着かなくなるのか考えていたとはさすがに言いずらい。


「あの、彼の前で上手く微笑むにはどうしたらよいかなって考えてて……」


少しどもりながら言ってしまったけどジョージさんは気にすることなくクスッと小さく笑いながら、私の肩に手を回して抱き寄せてきた。

「きっとまだ緊張しているんだろう。徐々に慣れるさ」


緊張、しているわけではないと思う。


現に草原で話していたときは、そんなことはなかったのだから。


けれど、じゃあ何故?と問われたら、答えることが出来ない。
だから私は曖昧に微笑み頷いた。




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