BLack†NOBLE
7.sette


 狭い路地を抜けて坂を上がっていく。ここは絶対に観光客が足を踏み入れないような静かな住宅街だ。

 この時間は、人の気配もなく……ひっそりとしている。


『おい……本当に蔵人の屋敷はこっちでいいのか?』

 どんどん狭くなっていく道幅に古い建物……少し不安だ。この女が本当に信用できるのかが最大の不安だ。


『大丈夫よ。元妻が言うんだから間違いなしっ』



 フィレンツェの道は建物に挟まれた路地が多く、地図を見ながらも同じ様な通りばかり。

 ここに住んでいた頃は、難なく過ごしていたが、今自分がどこにいるのか分からない。





『ねぇ、瑠威。飲酒運転じゃない?』

『酔いは覚めてる。ちなみに無免許だ』


 この国の免許は、もう既に更新されずに期限切れだろう。


『ちょっ……最低っ! この車、離婚する時にクロードから貰った大切な車なんだから、ぶつけないでよね!』


『心掛ける』



 当然だ、事故を起こして身分証明もできない外国人が銃を所持してたら下手したら日本に帰れなくなる。

 パスポートは、蔵人に奪われままだ。それに所持金ゼロだ……怪しすぎるだろ。




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