琥珀色の誘惑 ―日本編―
(2)王子様は、ある日突然
最寄り駅から徒歩十分、大きな公園の近くに舞の自宅はあった。

舞の父は経済産業省の役人である。出世からは程遠いが、一応、国家公務員だ。
そのため、舞の一家は公務員宿舎に住んでいた。


広めの敷地に四階建てで四棟建っている。
全六十四戸で、月瀬家は二号棟の二階。一戸につき一台分の駐車スペースが平置きで確保されていて、更に、来客用の駐車場もあった。
まさに至れり尽くせりだ。

問題は、町内会で村八分になることと、近くの商店街で買い物がしづらい点であろうか。

数年前、マスコミ報道で公務員宿舎が槍玉に挙がったことがある。
以降、とかくその傾向に拍車が掛かっていた。


しかも、それは他人だけでなく、身内も同じだ。

父の兄弟姉妹はほとんどが自営業者である。
そのため、公務員というだけで風当たりがきつい。

だが、引越しはしたくてもできない。
マイホーム以外で出て行くとなると、上司から睨まれることになり……。




「たっだいまぁ~。マイさまのお帰りだぞ~」


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