琥珀色の誘惑 ―日本編―
(21)バッド・タイミング
舞はこっそり手首を擦る。

目をやるとそこには青痣ができていた。もし、これをヤイーシュがやったと知ったら?


「さ、触られてない。勝手にベッドに当たって、コケただけだから」

「ヤイーシュはお前に向かってジャンビーアを抜こうとした」

「抜いてないっ! まだ抜いてないもの。だから、アルもそれを引っ込めて。お願いだから、怖いことは止めて」


舞にヤイーシュを庇う義理はない。

でも、ミシュアル王子に側近を手に掛けて欲しくなかった。


「お願い……アル……お願いだから」


ミシュアル王子は舞の言葉にスッとジャンビーアを下ろし、鞘に戻した。


『ヤイーシュ。この度は不問とする』

『あ……りがたき、幸せ』


ヤイーシュは日本式の土下座を、肘を伸ばしたままで数回繰り返した。

舞の目には、アッラーの神様に祈りを捧げているようにも見える。 


舞がようやく心からホッとした時、ミシュアル王子は真正面から彼女を見据えた。


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